次のような疑問に答える記事です。
「スタッドレスタイヤをインチダウンするメリットとデメリットを知りたい」
「純正タイヤより安いって本当?」
「注意点も知りたい」
インチダウンとは、タイヤの外径を変えずにホイールを小さくし、タイヤのゴムの部分の面積を増やすことです。
スタッドレスタイヤは冬の時期にしか使用しないので、できるだけ費用を抑えたいと思っている人も多いのではないでしょうか。
この記事では、スタッドレスタイヤをインチダウンしたときのメリットとデメリットがわかります。
実際にインチダウンをするときの注意点も解説するので、作業をする前の不安を減らせますよ。
スタッドレスタイヤは雪道を安全に走るためのタイヤです。メリットとデメリットだけでなく注意点もよく理解して、インチダウンを行ってください。
スタッドレスタイヤでインチダウンするメリット
スタッドレスタイヤをインチダウンするメリットは以下の5つです。
- 純正タイヤより安い
- 燃費が上がる
- 乗り心地が良くなる
- 滑りにくくなる
- ハンドルが取られにくくなる
価格だけでなく、運転性能にも嬉しいメリットがありますよ。
それでは1つずつ詳しく解説します。
純正のタイヤより安い
まず1つ目のメリットとして、純正タイヤよりも安く手に入るケースが多いことです。
インチダウンをするとホイールは小さくなり、タイヤの厚みは増します。ホイールは小さいほうが安く手に入るので、必然的に価格は下がることが多いです。
また、一般的にタイヤは薄くなればなるほど値段は高くなります。
タイヤはゴムでできていますが、タイヤの構造を維持するカーカスや、外側のゴムの耐久性を高め補強するベルトなど、多くの金属が使用されています。
タイヤが薄いと限られた面積でタイヤの性能を確保しなければならず、金属をより多く使用する必要があり、価格は上がる傾向です。
インチダウンを行うメリットで最も大きいのが、タイヤにかかる費用が安くなることです。
燃費が上がる
2つ目のメリットは、燃費の向上です。
インチダウンをするとタイヤの厚みが増すので、地面に接する部分が少なくなり、地面との抵抗が小さくなります。
地面との抵抗が小さいとタイヤは転がりやすく、少ないパワーで動かせます。
ショッピングカートを例にあげると、通常はスーッと軽い力で動きますが、ロック(抵抗)がかかると一気に重くなりますよね。
このように、地面との抵抗が小さいほど燃費は向上します。
また、インチダウンをするとホイールの部分が小さくなります。
タイヤはゴムの部分よりもホイールのほうが重いので、ホイール部分の面積が小さくなるとタイヤの重量が軽くなり、車全体の軽量化につながることも。
重たい車よりも、軽い車のほうが燃費は上がります。
インチダウンでタイヤにかかる抵抗が小さくなることと、ホイールが軽くなることで、車は少ないパワーで走行でき、燃費が向上します。
乗り心地が良くなる
3つ目のメリットは、乗り心地が良くなることです。
タイヤをインチダウンするとホイールの面積は減り、ゴムの部分の面積が増えます。
ゴムの面積が増えてタイヤの厚みが増す(扁平率が高くなる)と、地面から受ける衝撃や振動を吸収しやすくなるメリットがあります。
わかりやすくいうと、薄いせんべい布団で寝るよりも、厚みのあるマットレスで寝るほうが底つきを感じにくくなるのと同じです。
ゴツゴツしたハードな乗り心地よりも、やわらかく快適な乗り心地が好みの人にはおすすめです。
滑りにくくなる(接地圧が上がるため)
4つ目のメリットは、走行中に滑りにくくなることです。
インチダウンによりタイヤの厚みが増すと、タイヤの横幅が狭くなります。
タイヤの横幅が狭くなると地面との接地面は少なくなりますが、車の重さが少なくなった接地面に集中するので、タイヤにかかる接地圧が上がり滑りにくくなります。
つまり、小さい面積で刺さるように走るほうが雪の上では効果的です。
タイヤにかかる接地圧が上がることで、車の重さが雪に食い込みやすくなり、滑りにくくなる利点があります。
ハンドルが取られにくくなる
5つ目のメリットは、ハンドルが取られにくくなることです。
雪道を走行していると、前の車が残したタイヤの跡が残り、轍(わだち)ができます。
タイヤの幅が広く太いタイヤだと轍からはみ出てしまう場合があり、ハンドルを取られてしまう可能性も。
しかし、インチダウンをしてタイヤの幅が狭ければ、ハンドルが取られにくくなります。
雪道で思うようにハンドル操作ができないと、非常に危険ですよね。インチダウンをするとハンドルが取られにくくなるのは、運転手の安心にもつながります。
スタッドレスタイヤでインチダウンをするデメリット
ここまでインチダウンのメリットについて解説してきました。費用を抑えられるだけでなく、走行にもさまざまな利点があります。
しかし、良い面ばかりではありません。デメリットもきちんと理解しておきましょう。
- 見た目がカッコ悪くなる
- コーナリング性能が薄くなる
- グリップ性能が薄れてしまう
順番に解説します。
見た目がカッコ悪くなる
インチダウンをすることで、タイヤ全体の見た目が変わります。
ホイールが小さくなるので足回りの存在感は出しにくく、どうしてもスタイリッシュさにかけてしまいます。
ドレスアップの観点からいえばマイナスな印象がありますが、見た目にこだわらないのであれば問題ありません。
しかし、ホイールで個性を出したい人や、ドレスアップしてカスタマイズを楽しみたい人には不向きです。
コーナリング性能が薄くなる
インチダウンをするとコーナリング性能が低下します。
これは、インチダウンによってタイヤの厚みが増すと、タイヤがたわみやすくなるからです。
タイヤのたわみが増えるだけでなく、ホイールから地面までの距離も長くなるので、ハンドル操作の応答はにぶくなります。
カーブを曲がるときハンドルがふらつくなど、やや安定性にかけるのが欠点です。
スポーティーな走りを楽しみたい人には、心もとなく感じてしまうかもしれません。
グリップ性能が薄れてしまう
失われる性能はコーナリング性能だけでなく、グリップ性能も低下します。
グリップ性能とはタイヤと地面の抵抗力を指し、グッと踏ん張る力のことです。
インチダウンをするとタイヤと地面の接地面積は小さくなり、抵抗も少なくなります。
抵抗が少なくなると少ない力で車を動かせる反面、カーブやブレーキを踏んだときにかかる抵抗も少なくなるので、グリップ力の低下につながります。
カーブを曲がるときにふくらんだり、ブレーキを踏んでも思った場所で止まれなかったりする可能性も。
燃費が良くなるメリットはあるものの、グリップ力が低下するのは避けられないでしょう。
インチダウンをした時のシミュレーション
ここまでインチダウンのメリットとデメリットを解説しました。
では、実際にインチダウンをすると、どれくらいサイズや金額に差があるのでしょうか?
ホンダのフリードを例にして表にまとめてみました。ぜひ参考にしてください。
タイヤの種類 | サイズ | タイヤ4本の値段(税込) |
標準 | 185/65R15 | 46,200円 |
インチダウン | 185/70R14 | 39,600円 |
※スタッドレスタイヤで「YOKOHAMA iceGUARD」の値段で比較
※TIREHOODの検索機能より引用(2022年10月27日現在の値段)
※ホイールや脱着工賃等は除く
タイヤのサイズを小さくすることで、6,600円(46,2000円ー39,600円)の安くすることができます差があります。ただ、タイヤの種類や出荷数によってちがいはあるので、必ず安くなるとはいえません。
ですが、一般的にインチダウンによって安くなる可能性は高くなるといえます。
インチダウンをする上での注意点
インチダウンを行うときには、必ず守ってほしい注意点があります。
安全に走行するためにも、以下の5つを確認しながらタイヤを選んでください。
- タイヤの外径を変えない
- ロードインデックスを下回らない
- タイヤが車体や部品に接触しない
- ブレーキキャリパーに干渉させない
- サイズ設定内でインチダウンする
それでは詳しく解説します。
タイヤの外径は変わらない
インチダウンをするときに、タイヤの外径は変えないでください。
タイヤの外径が変わってしまうと、タイヤが1回転する長さが変わり、スピードメーターに誤差が出て車検に通らなくなります。
年式によってちがいはあるものの、だいたい前後10㎞以内が目安です。
ホイールやタイヤの大きさは変えても、タイヤの外径は必ず同じになるように設定しましょう。
ロードインデックスを下回らない
次に、標準タイヤのロードインデックスを下回らないタイヤを選んでください。
ロードインデックスとは、タイヤ1本で支えられる重さを表す指数です。
タイヤを横から見ると「195/65R15 91H」などの表記があります。
上記の例だと「91」の部分がロードインデックスの指数となり、この指数を下回るタイヤを装着すると危険です。
標準タイヤのロードインデックスを下回ると、タイヤが車の重さを支えきれなくなり、バーストを起こしたりほかの部分を損傷したりする恐れがあります。
また、ロードインデックスが不足しているタイヤは車検にも通りません。
サイズだけでなく、ロードインデックスも必ず確認してください。
タイヤが車体や部品に接触しない
タイヤをインチダウンするときは、車体やほかの部品に接触しないようにしましょう。
インチダウンによってホイールとタイヤのサイズが変わると、ハンドルを目いっぱい切ったときや、段差を乗り越えるときなどに異音がする場合があります。
そんなときはタイヤが車体のどこかに接触している可能性が考えられます。
直進などでは問題なく走行できても、ハンドル操作で異音がする場合は再度確認を行いましょう。
ブレーキキャリパーの干渉に注意
インチダウンは、タイヤとブレーキキャリパーの干渉にも注意が必要です。
ブレーキキャリパーとは、タイヤと共に回転するディスクローターに取り付けられている部品です。
ブレーキを踏むと、ブレーキキャリパー内のブレーキパッドがディスクローターに押し付けられ、回転を止めることでタイヤを停止しています。
ブレーキキャリパーはタイヤのすぐ後ろに位置しているので、インチダウンによってホイールが小さくなると、2つの部品がぶつかってしまう恐れがあります。
ブレーキは車にとって一番重要な部品です。走れない車よりも止まれない車のほうが危険です。
ホイールのサイズを変更して、ブレーキキャリパーと干渉しないかよくチェックしてから取り付けるようにしてください。
サイズ設定内でインチダウンする
インチダウンをするときは、規定の範囲内で行いましょう。
もし車にあわないサイズのタイヤを装着すると、車検に通らないだけでなく、車の性能を発揮できなくなる可能性があるからです。
先ほども説明しましたが、ホイールのサイズが小さすぎると、ブレーキの部品に干渉して非常に危険です。
また、車の重さを支える力が足りないタイヤを装着してしまうと、車体の重さに耐えきれず、思わぬところが損傷し取り返しのつかないことになる恐れもあります。
必ずタイヤのサイズと車にあったタイヤを選んで装着し、車に負担をかけないようにしましょう。
まとめ
スタッドレスタイヤをインチダウンして装着すると、費用が安く抑えられるだけでなく走行にもさまざまなメリットがあります。
燃費の向上や乗り心地が良くなるため、エコドライブを心がけている人や、やわらかい乗り心地が好みの人におすすめです。
デメリットや注意点もありますが、タイヤの費用を抑えられるのは大きなメリットです。
スタッドレスタイヤを使用する季節は限られているので、少しでも安く装着したい人はインチダウンを検討してみてください。